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読書感想文

 



 千葉雅也『現代思想入門 』(講談社現代新書) 読了。

 かなり売れているようですね。


 「予備知識がいらない」とまで言えないにせよ、非常に噛み砕かれており、理解しやすかった。まさに「入門書の入門書」に相応しい新しいバイブルだと感じた。


 学生時代「社会学部」に属しておりゼミなどでも現代思想に触れることが多々あったが、哲学方面に詳しい学生や先生方というのはどうにも威圧感があり、近寄りづらかった。そこで自分なりに知識を深めようとするも、入門書ですら手が付けられないという苦い経験が度々ある。なので自分が大学生の頃に本書があってくれたなら・・もうちょっと胸を張って深く入り込めたのではないかという「たられば」が過ぎった。


 現代思想は生きづらさを感じやすい私にとって、安心感を与えてくれる。暫くの間忘れていた「逸脱」への好奇心、それを善とする道筋を見出してくれ、狭い檻を飛び出したかのような爽快な心地を味わえた。


 しかしながら、同時に近年感じ続けている「思考の単純化」というか、そんな事についても改めて考えさせられた。



 本書195頁に { かつてはアカデミズムからはみ出して「これは学問なのか」と人を当惑させるような最前線を切り開いていった人たちがすっかり古典化されてしまいました。} といった筆者の嘆きとも取れる一文があった。



 私はかなり極論だけど「考え続けていれば良い」と思っている。「言い合い続けていれば良い」とも言い換えがきく。どんなに無駄に思えることでも、より深く、内側を考察しようと試み、時には「そもそも論」に立ち返ったり、そうして人間は常に人間を監視し続けているべきだと思っている。答えが出なくても、それが続きさえすれば、最大の悲劇は起こらないと考えている。


 なので人間が人間を考察し、「新たなる」なのか「潜在的」なのか「人間の在り方」を発見してみたり、別角度から指し示してみたりといった、一種のゲームのようにも思えるこの行為〜しかしそれが、生きづらさや凡ゆる違和感や社会問題を発見、解明する材料になってきたのです〜、このような考察・煩悶が古典化し、ストップてしまっている状況があるのであれば、それは私にとっては危機感を感じざるをえない。自分は考え続けるべきだ、そう悟ったのでした。



 さあ話が逸れましたが、現代思想や精神分析、ってそもそも何??・・といった方って意外と多いと思います。これまで「手始め」のない世界だったこの分野に風穴を開けてくれる名著だと感じました。お薦めです。


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