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中原中也『渓流』
- 2021年5月29日
- 読了時間: 1分
渓流(たにがは)で冷やされたビールは、 青春のやうに悲しかつた。 峰を仰いで僕は、 泣き入るやうに飲んだ。
ビシヨビシヨに濡れて、とれさうになつてゐるレッテルも、 青春のやうに悲しかつた。 しかしみんなは、「実にいい」とばかり云つた。 僕も実は、さう云つたのだが。
湿つた苔も泡立つ水も、 日蔭も岩も悲しかつた。 やがてみんなは飲む手をやめた。 ビールはまだ、渓流(たにがは)の中で冷やされてゐた。
水を透かして瓶の肌へをみてゐると、 僕はもう、此の上歩きたいなぞとは思はなかつた。 独り失敬して、宿に行つて、 女中(ねえさん)と話をした。
(一九三七・七・一五)
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独り失敬して、宿に行つて、 女中(ねえさん)と話をした。
、、、、このイケメンは。。
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