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読書



 話題に上がっていることもあり、2015年ノーベル文学賞ウクライナ生まれベラルーシ育ちのジャーナリスト・ノンフィクション作家、著:スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ(訳:三浦みどり)『戦争は女の顔をしていない』読了。


 百万もの「女性が従軍(ソヴィエト軍)した歴史上唯一の戦争」独ソ戦争において、従軍した500人もの女性の言葉を、著者が聞き取り取材した作品。


 タイトルもそうだし、解説(澤地久枝)の文言にも “一人ひとりの証言のむこうに、男性支配の社会があり、国がある。” とあり、従軍女性が抱えた惨憺たる戦後の生活、内状、差別が浮き上がる。ただ、そういったフェミニズム(女性開放思想)的な観点で物語が進むわけではなく、あくまでも戦争の体験が語られるので、核はそこだけにはない。並行してありとあらゆる感情が胸中を曇らせた。


 要は戦争の話。戦争は“人間の顔をしていない”。

 ここで語られている戦争には「英雄」とか「伝説」がいない。

 ただの「本当」。


 証言者、著者、訳者、他、この本がここにあるために尽くした全ての方々の仕事に感嘆。

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