空の半月と
その左っ側のほど良く小さな桜の枝々との
最もバランスのとれた立ち位置を探し、
左右しながら、
一層夜らしく灯った街々に気づくこともなく
私は老いてゆくのでしょうか。
川を斜めに架かる鉄橋がゆれ
電車が来ては、帰ってゆく
そんな繰り返しのなかにすら溶け込めぬまま。
飲み干した缶を蹴り飛ばし、
もう1本と思いながら、
思いの外動かない身体、
これを前後前後とさせながら。
覚束なく嗤い
たどたどしく佇み
背筋の曲がった蟾蜍(ヒキガエル)のように
ジトジト、ジトジト、ジトジト、ジトジト
ジトジト、ジトジト、ジトジト、ジトジト
目の前のフィルム写真を懐かしむべもなく
滲みでる酸液の臭いに嘔吐しかけては、
心臓は呼吸のたびにギシギシと音をたてている
私は死にゆくのでしょうか。
ウィスキー色した右心房と、
飲み干された左心房とが、
相対するわけでなく共存する不可思議。
純粋と不純、その見境がこの上なくもの哀しくもしかし、
明媚な風(ふう)にも捉えられる、
そんな「今」上弦の刻
私は何と称される者であるのか。
このまま、老いてゆくのか。
いや、むしろこのままで存るのか。
− それは幸せとも思え、不幸せとも思えます。
空の半月と
その左っ側のほど良く小さな桜の枝々は、
ただ、そこにあるだけであり、
何を伝えようもしてはいないのです。
2022.3.13
※歌なし、詩。
Comments