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夜風(原詩:中原中也『むなしさ』)

臘祭(ろうさい)の夜の 巷(ちまた)に堕(お)ちて 

 心臓はも 条網(じょうもう)に絡(から)み

脂(あぶら)ぎる 胸乳(むなぢ)も露(あら)わ 

 よすがなき われは戯女(たわれめ)


  夜風よ 夜風よ 夜風よ 夜風よ


せつなきに 泣きも得せずて 

 この日頃 闇(やみ)を孕(はら)めり

遐(とお)き空 線条(せんじょう)に鳴る

 海峡岸 冬の暁風(ぎょうふう)


  伝えよ 伝えよ 伝えよ 伝えよ


白薔薇(しろばら)の 造花の花弁(かべん)

 凍(い)てつきて 心もあらず

明けき日の 乙女の集(つど)い 

 それらみな ふるのわが友

偏菱形(へんりょうけい)=聚接面(しゅうせつめん)そも

 胡弓(こきゅう)の音(ね) つづきてきこゆ


  夜風よ 夜風よ 伝えよ 伝えよ

  夜風に 預けよう 心臓を 血液を 骨身を

  夜風よ 夜風よ 明けよ ひらけ、届けよ!


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